母がありえない厚化粧をしていたので思わず牛乳パックを落としそうになった私は悪くないと思う。チークの色が濃すぎて熱でもあるの?と聞きたくなるような正に薔薇色の頬に、顔と首で色が違いすぎるファンデーションの厚塗り。老眼鏡の事なんて欠片も考えていないハリウッド女優張りの睫毛を目にした時点で耐えられなくなった私は通販で購入したメイク落としを母に突きつけた。メイク落としを通販で買ったの、と言いたげな視線に構わず、私は自分の掌にジェル化したメイク落としをのばして遠慮なく化粧品の無駄遣いの顔に塗りたくった。感触からごそりとファンデーションが落ちた気がして更に塗りたくる。ごちゃっとした顔のまま母が何事か言うが、目元の小ジワなんてもっといい誤魔化し方があるから教えると言い、続けて皮膚呼吸って考えた事がある?と聞けば母は静かになった。それから水洗いしてさっぱり元のしょうゆ顔に戻った母に懇々と説教をする。あんなにくどい顔してちゃあ心臓に悪いとも言ってやり、落ちこみかけた母を先程のメイク落としの話で持ち上げる。通販で買ったんだけど化粧がよく落ちるだけじゃなくて、肌に優しくお手入れ感覚で使えるんだよ、私のような乾燥肌もほれこの通りぷるん、と頬を叩いて実演する。それほど柔らかくはなかったが母にはぷるんとして見えたらしい。私もそれ使いたい、と言ったのでさっきの厚化粧に至る化粧法を改善しようねと言うと、母は目をそらして下手な口笛を吹いた。